職場で「楽しく、生き生き働く」ためのワーク・モチベーション

職務満足感とコミットメントの心理学
「どうしてあの人は、あんなに前向きに仕事に取り組めているのだろう?」
「同じ職場なのに、モチベーションの差はどこから生まれるのだろう?」
職場でのモチベーションを考えるとき、鍵になるのが
「職務満足感」と「コミットメント」という2つの心理的概念です。
この2つを理解することで、
・社員がいきいき働ける職場とは何か
・モチベーションが続く組織とは何か
が、より具体的に見えてきます。
ワーク・モチベーションとは何か
ワーク・モチベーションとは、人が職場でどのように行動するかを方向づける心理的エネルギーのことです。
具体的には、次の3つから成り立っています。
なぜ働くのか(動機)
どのように働くのか(努力の方向)
どの程度続けられるのか(持続性)
マズローの欲求段階説 *1)、ハーズバーグの動機づけ・衛生理論*2)、自己決定理論*3)など、多くの心理学理論は「人は何によって動機づけられるのか」を説明しています。
その中でも、実務的に特に重要なのが職務満足感と組織コミットメントです。
職務満足感(Job Satisfaction)とは
職務満足感とは、仕事や職場に対して抱くポジティブな感情や満足度を指します。
主な要因には、次のようなものがあります。
仕事の内容そのもの(やりがい・達成感)
公正な処遇(給与・評価)
人間関係(上司・同僚との信頼)
成長機会(スキルアップ、キャリアの展望)
ハーズバーグの二要因理論では、
達成感・責任・成長はモチベーションを高める「動機づけ要因」
給与・労働条件・職場環境は不満を防ぐ「衛生要因」
と整理されています。
つまり、条件を整えるだけでは人は前向きにはなりにくく、「仕事そのものの意味」や「成長実感」が重要なのです。
組織コミットメント(Organizational Commitment)とは
コミットメントとは、組織や仕事に対する心理的な結びつきを指します。
主に次の3つに分類されます。
感情的コミットメント
「この会社が好き」「ここで働きたい」という愛着や共感存続的コミットメント
「辞めると損をする」「今のほうが安定している」という損得意識規範的コミットメント
「辞めるのは無責任」「恩があるから残る」という義務感
特に重要なのは、感情的コミットメントです。
これが高いと、指示されなくても主体的に動き、創造性や協働性も高まりやすくなります。
職務満足感とコミットメントの関係
多くの研究で、職務満足感とコミットメントには正の相関があることが示されています。
仕事に満足している人ほど、組織への愛着も高まりやすい。
ただし、両者は同じものではありません。
例えば、
給与が良いから辞めない(存続的コミットメント)
でも仕事には全くやりがいを感じていない
というケースも存在します。
「辞めない」ことと「前向きに働いている」ことは、必ずしも一致しないのです。
職場で楽しく・生き生き働ける要因
職務満足感とコミットメントを高めるために、職場で意識したいポイントは以下の通りです。
仕事の意義・やりがい
自分の仕事が組織や社会にどう貢献しているかを実感できる裁量と自律性
仕事の進め方を自分で工夫できる余地がある(自己決定理論)成長とフィードバック
学びと評価が循環している人間関係の良好さ
心理的安全性があり、助け合える関係ワークライフバランス
仕事と生活の調和が取れていること
これらが整うことで、人は「やらされている仕事」から「自分ごととして取り組む仕事」へと変化していきます。
モチベーションは「気合」や「根性」ではなく、心理と環境の設計によって高めていけるものです。
職場やチームを見直すヒントとして、ぜひ一度、立ち止まって考えてみてください。
注釈:
*1)マズローの欲求段階説:人の欲求は「生理的→安全→社会的→承認→自己実現」と段階的に高まり、下位の欲求が満たされることで、より高次の欲求が動機づけとなる理論。
*2)ハーズバーグの動機づけ・衛生理論:ハーズバーグの動機づけ・衛生理論:仕事の満足を高める要因(達成感・成長など)と、不満を防ぐ要因(給与・環境など)は別であり、環境改善だけではモチベーション向上には不十分とする理論。「給料や環境を整えても、人は必ずしも意欲的にはならない」とし、やりがいや成長機会こそが仕事のモチベーションを高めると示した。
*3)自己決定理論:自律性・有能感・関係性という3つの心理的欲求が満たされることで、人は主体的に行動しやすくなるとする動機づけ理論。「やらされ感」ではなく「自分で選んでいる」という感覚が、仕事の意欲や持続性を高めるとされている。




